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クラミジア

アメーバ共生クラミジア

アメーバに共生する原始的なクラミジア

クラミジアの祖先は、今から7-10億年前に、二つの系統に分かれ、その一群は、ヒトを含む哺乳動物に適応進化し、性感染症や肺炎など呼吸器疾患を起こす病原細菌へと進化を遂げました。一方、他の一群は、恐らく単細胞性の真核生物内で進化し、現在、アカント・アメーバに共生する難培養性の細胞内寄生性細菌として身の周りの土壌や河川水等自然環境中に、普遍的に見ることができます。

最近の研究で、ヒトに起病性のある病原性クラミジアの平均ゲノムサイズが1.0-1.2Mbp程度と比較的小さいのに比べ、このアメーバに共生するクラミジアのゲノムサイズは2-3Mbpと2倍程度大きいことが明らかになりました。この所見は、適応進化の過程で、宿主細胞に捉えられ易い邪魔になる分子を病原性クラミジアは捨てゲノムをスリム化した一方で、アメーバに共生するクラミジアでは、そのスリム化が起こっていないことを示唆しています。すなわちアメーバに共生しているクラミジアは、太古の病原性クラミジアの特徴をいまだ温存していると考えられ、それ故に、これらのアメーバ共生細菌を”原始クラミジア”と呼んでいます(自然環境中に普遍的に生息するので”環境クラミジア”とも呼ばれています)。病原性クラミジアは、宿主細胞に捉えられ易い邪魔になる分子を捨てることで(あるいは改変)ヒトを含む哺乳動物への適応進化に成功したと考えられ、原始クラミジアから病原性クラミジアが失った分子を見つけ出し、その分子の機能解析からは、病原体を制御する為の新しい方策が見いだされる可能性があります。原始クラミジアは、病原体の宿主への適応進化の過程を研究する際の、生物ツールとして利用できるかもしれません。

一方、原始クラミジアは、病原性クラミジアと同じように、基本小体網様体より構成されるユニークな二相性の増殖環を持っています。ヒトへの起病性については、まだまだ良く分かっていませんが、肺炎や流産との関係性を示唆する報告が散見されます。

山口 博之(北海道大学保健科学研究院)

アメーバ内で活発に増殖する原始クラミジア(Protochlamydia sp.)
(撮影: 順天堂大学 中村眞二 博士)。
◆基本小体 (elementary body:EB)
宿主細胞への感染能力はあるが分裂増殖能を欠いた菌体。
◆網様体 (reticulate body:RB)
感染能力はないが細胞内にて分裂する際の菌体。