グラム陰性通性嫌気性菌

腸内細菌科

赤痢菌

セラチア

ビブリオ科

バルニフィカス

その他のグラム陰性通性嫌気性桿菌

エロモナス

グラム陰性好気性桿菌

百日咳菌

ブルセラ

バルトネラ

レジオネラ・ニューモフィラ

コクシエラ

グラム陰性好気性球菌および球桿菌

淋菌

アシネトバクター属菌

らせん菌群

カンピロバクター

ヘリコバクター・ピロリ

グラム陽性球菌

ブドウ球菌科

黄色ブドウ球菌

レンサ球菌科

化膿レンサ球菌

グラム陽性芽胞形成桿菌

炭疽菌

ガス壊疽

ボツリヌス

グラム陽性無芽胞桿菌

リステリア・モノサイトゲネス

放線菌とその関連細菌

ジフテリア菌

らい菌

マイコプラズマ

その他のマイコプラズマ

クラミジア

肺炎クラミジア

アメーバ共生クラミジア

口腔細菌

口腔細菌(アクチノマイセス)

口腔細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)

ミュータンスレンサ球菌

ようこそ不思議な細菌の世界へ

グラム陽性球菌 > ブドウ球菌科

黄色ブドウ球菌Staphylococcus

ブドウ球菌 (Staphylococcus) 属は、19世紀末に化膿巣からはじめて分離されました。菌の形態・配列がブドウの房状に見えることから、ブドウ球菌と名付けられました。

ブドウ球菌は、人や哺乳動物の皮膚や粘膜などに生息し、現在49種類の菌が知られています。その中で一番問題となるのが黄色ブドウ球菌 (S. aureus) です。黄色ブドウ球菌の病原性が強い理由としては、さまざまなタンパク性毒素を産生することが挙げられます。たとえば、毒素性ショック症候群毒素 (TSST-1) は免疫系の重要な細胞であるTリンパ球にはたらき強い炎症を引き起こし、毒素性ショック症候群の原因になります。ブドウ球菌エンテロトキシンと呼ばれる毒素はTSST-1と同様に炎症を起こしますが、さらに嘔吐毒としてはたらき、ブドウ球菌性食中毒を引き起こします。一方、表皮剥奪毒素は皮膚にはたらき、黄色ブドウ球菌性熱傷様症候群の原因となります。それでは、黄色ブドウ球菌はすべての人にとても危険な病原体かというと、健常成人の鼻腔に約20%程度常在しており全く無症状なのです。従って、健常人では皮膚化膿疾患を起こすものの、重篤な感染症を起こす頻度は低いと考えられます。問題は基礎疾患をもつなど免疫力の低下した人で、肺炎、敗血症、骨髄炎、関節炎などの重篤な感染症を引き起こします。この典型が、薬剤耐性を示し院内感染症の最大の原因微生物であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)です。最近、由来は異なりますが、病院外でも小児やアスリートなどさまざまな人で問題となっている市中型MRSAと呼ばれるMRSA感染症が広がりつつあり、大きな問題となっています。MRSAを含む黄色ブドウ球菌感染症は接触感染により拡がりますので、日常生活では、清潔を保ち、けがをした場合には適切な処置をし、感染箇所には触れないことが大切です。

中根 明夫(弘前大学大学院医学研究科感染生体防御学講座)