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化膿性レンサ球菌
(ストレプトコッカス・ピオゲネス Streptococcus pyogenes

化膿性レンサ球菌は、その名前の通り球菌が連鎖した形態で観察されます。また、この菌は、菌の識別で用いられる抗原分類と血液寒天培地での溶血斑の分類からA群レンサ球菌や、A群β溶血性レンサ球菌とも呼ばれています。この菌は咽頭炎などの軽度の疾患から、致死率が30%を超える劇症型A群レンサ球菌感染症まで、多様な疾患を引き起こします。学童期の咽頭炎のほとんどが、この菌が原因であり、日本で年間約25万人の患者が発生しています。全世界でも年間6億人の患者が発生し、そのうち50万人程度が死に至ると推定されているため世界的にも重要な病原性細菌といえます。そのため、日本においても感染症法下における発生動向調査で、5類感染症となっています。この菌による疾患の治療には、マクロライド系抗生物質やβ−ラクタム系抗生物質が使用されていますが、マクロライド系抗生物質に対しては、4割もの菌株で耐性が見られることが問題となっています。β−ラクタム系抗生物質への耐性は見られませんが、アレルギーなどにより使用できない場合には、治療における抗菌薬選択には注意が必要です。この菌の特徴は、ゲノムの大きさが比較的小さいながら、数十の病原因子が存在することが挙げられます。そして、この菌による疾患の多様性は、菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)が、異なる病原性遺伝子を持ち込むことで、菌株による病原性が異なるのではないかと考えられています。その一方で、病原性遺伝子発現を制御する遺伝子の一塩基の違いが本菌の劇症型の出現に重要であることがわかってきました。しかし、遺伝子の違いや発現の違いだけで全ての劇症型菌を説明できるわけではなく、病原因子の発現を制御する遺伝子以外の違いの解明や人の免疫状態(生活習慣病等)との関わりについて研究が推進されています。

丸山 史人(京都大学微生物感染症学分野)